テキストサイズ

言葉で聞かせて

第2章 体調不良と猫


心臓が小さな音を立てた気がした


なんか、変だ
苦しい



それから千秋さんの体調はすぐに回復した


「おい、聖夜。今日もアフター行かねえの?」
「すみません。今日も全て断ってしまったんです」


今日は千秋さんと約束してるから


閉店後の店で先輩に声を掛けられたけれど、僕は着々と帰宅の準備をする


「最近お前の付き合いが悪いって俺が客に愚痴られてんだけど」
「そうでしたか。申し訳ありません。今日は予定があるので、これで失礼します」


控え室を出て、廊下を歩いていると


「悠史!」


店で僕をこう呼ぶのは1人だけ

双子の弟、敦史だ


「敦史、お疲れ様」
「………帰んのか?」
「えぇ」


敦史が僕を鋭い眼光で睨みつけた


「…………あいつか?」
「あいつだなんて、失礼な言い方はいけないよ」
「随分入れ込んでるんだな」
「…………」


僕が答えないでいると敦史はフン、と鼻を鳴らした


「仕事に支障があるようなら、あいつと関わるのやめろ」


そう言うと、敦史は去っていってしまった



わかってる


わかってる
けど


この気持ちが何なのか
わからないことがすごく気持ち悪くて


だからもう少しだけ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ