
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
悠史さんが泣いてる、と思った
悠史さんにとっても敦史さんは半分なんだろうな
もう半分は誰だろう?
やっぱり自分かな
僕ならいいな
「好きなら、守ってみせろよ!そのままじゃ、あの時の敦史と変わらないだろ!!!!」
悠史さんが必死で敦史さんに思いを伝えようと叫ぶ
「あの時」っていうのは敦史さんが大事な人を傷つけられた時のことだろうか
震える手と、声に滲む涙が悠史さんもあの時のことを辛く思っているんだと知らせた
「……」
僕は静かに立ち上がって悠史さんの前に回り込むと、その唇がこれ以上言いたくないことを言わなくていいように願いを込めてキスをした
「……っ」
悠史さんが驚きに目を見開いているのに微笑んで、今度は敦史さんの元へ
僕が近づくと、敦史さんは僕を強い目で睨んだ
けど、全然怖くないよ
むしろ愛しい
その目も、身体も、心も
全部一緒にキスして抱き締めてしまいたい
「僕は、あの時の敦史さんの恋人じゃありません。……一応男だし、最近は前より少しは強くなったって思います。だから、あれくらいじゃ壊れない。むしろ気持ちをぶつける相手が自分だったことを喜んでいるくらいです」
