テキストサイズ

暗闇で恋しましょう

第3章 貴方の優しさは私の本音を隠す

少し視線を動かせば、水上さん寄りの小皿にとったと思われる骨があった。



......取って、くれたんだ



いつ、と思う程、静かに行われていたその行為。


出かかる言葉、必死に飲み込む。



ダメ。我慢して



この言葉、何度、飲んだか分からない。


言いたくて、言いたくて。


でも言っちゃダメで。



「?大丈夫?なんか辛い?」



様子がおかしい私に気付いた水上さんが声を掛けてきた。



あー、何で飲み込もうって頑張ってる人間に“そういうところ”見せるかなぁ



言ったって、貴方は傷付くだけなんでしょう?


“違う。俺は、”って否定するんでしょう?


それはそれは辛く悲しそうに。


その顔を思い浮かべ、なんとか唾ごとその言葉を飲み込む。



「辛くはない。けど、これ!魚の骨くらいもう自分で取れるって!」

「あら、バレた?」

「バレるよ!」

「まあまあ、良いじゃん。手間が省けたと思えば」

「そうだけどぉ」



ぶーと口をとんがらせ、本来言いたいことは全く違う言葉を吐く。


......あぁ、もどかしい。



“水上さんは本当に優しいね”



たったそれだけ、言いたいだけなのに.....


そんな一文ですら、水上さんの“罪の意識”は私に言わせてくれないのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ