テキストサイズ

暗闇で恋しましょう

第26章 この感情の名前は

隣を向けば、確かにそこには祥人がいて。



一体、いつ、ここに………



「ついさっきだよ。足音にも気付かないくらい物思いに老けてたみたいだから、黙って見てた」



心を読んだが如し、祥人は言葉を紡いだ。


“見てた”と言う割には、その視線は現在、工場地帯に向けられているが。



見ていたかどうかの真偽はともあれ、だ

来たんだったら声くらい掛けろよ



訝しげな視線を送るも、今度は読んでくれないらしい。


俺の思いへの反応はなく、祥人は話の続きを語り出す。



「そしたらあんな独り言言うもんだから、つい反応しちゃったわけ」



ははと微笑しながら、目線だけを俺に寄越す祥人。


その目線はうるさいくらい、“あの独り言、なに”って聞いていやがる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ