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暗闇で恋しましょう

第26章 この感情の名前は

俺の思考を妨げるように、どこからか音が鳴る。


音の方に意識を寄せれば、祥人のスマホのようで。


画面をちらりと見、俺を見やるものだから、気にするなと手で合図をする。


その合図を確認して、電話に出る祥人。


1言、2言、言葉を交わしたかと思えば、俺に今度は申し訳なさそうな顔を向けた。


あんな顔をするってことは、仕事でも入ったか。


俺は、気にするなともう1度合図する。


祥人は手でごめんと返して、電話をしながら車へと歩を進めた。


祥人の姿が車の中に消え、1人ぽつんと佇めば、蘇る思考。


でも、唐突に認識したあの時よりは随分と頭は冷静で。



まさか、な………



自分の思考に軽く否定をし、煙草をくわえたのだった。

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