
いつか手をつないで歩こう
第9章 地震
前野さんは、散らばった郵便物を拾い集めて私に渡してくれた。
「…すみません」
「でも驚いたなー。君と同じエレベーターに乗っていて地震が起きるなんて。
これって運命かな?
不謹慎だけど、ちょっと嬉しい気もする」
「…」
隣りに座る前野さんと目が合った。
今この空間には、私達二人きりだ…。
いつ開けてもらえるんだろうと、焦りの気持ちがわいていた。
前野さんは私に話し続ける。
「ずっとここで、君とこうしていたいな」
「冗談は止めて下さい、まだ余震があるかも知れないんですよ?」
「冗談なんかじゃない。君に付き合って欲しいと言った、答えを聞かせてくれ」
「それは…」
「っ!」
その瞬間。私の唇に、前野さんの唇が重なっていた。
「…ん…いやっ」
「美雪さん、君が好きなんだ」
