
いつか手をつないで歩こう
第15章 桜
数日後。お昼休みに、
私は百合ちゃんと食後のコーヒーを飲んでいたが…。
「実は美雪にだけ言っちゃうけど」
「なぁに?」
「私、秋に結婚することが決まったの」
「えーっ!それはおめでとう」
「ありがとう。
向こうのご両親、私をとても気に入ってくださってて。早く式を挙げて欲しいって言われてたのよ」
「うわー、やったね百合ちゃん」
「うふふふ。でね、美雪には披露宴のスピーチをお願いしたいんだ」
「もちろん、いいわよ」
誰でもいつかは、結婚してゆく。
そんな当たり前のことが、私には
当てはまらない…。
すると百合ちゃんが、思い出したように言った。
「そういえばさ、ちょっと前に大きな地震があったじゃない?」
「うん」
「あのときエレベーターの中で、美雪は企画開発部の前野さんと二人きりだったんだよね?」
「そうだけど。どうして?」
私はその名前にドキッと反応した。
「それがね。一部の社員の間で、
美雪と前野さんが付き合ってるっていう噂が流れてるの」
「えっ」
