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Fallen Angle

第3章 car

冷たく突き放す言葉に押され
「…うん…ごめん」
大きな背中を向けてショットグラスにTEQUILAを注ぎ、一気に飲み干す悠の姿に
「…怒ってる?」
不安そうに小さく声を掛ける。
「いや…」
甘い声で
「初めて作ってくれたカクテル、久しぶりに飲みたいな…なんて」
少し間が空き
「…1杯目のやつでいいのか?」
振り向く悠は悪戯な微笑みを浮かべている。
「あ…だめ。あれはジュースだったもん。悠くんよく覚えてるね」
「だからその呼び方するのやめろって」
シェーカーを振る小気味よい音が響く。
差し出されたタンブラーグラスには淡いピンクに染まるICE BREAKER
「懐かしいね」
「今の仕事始めたばっかりだったっけ?危なっかしかったもんなあの日…俺の店でよかったよ。ほんと」
「わたしに気づいてた癖に何も言ってくれなくて出てきたカクテルはジュースなんだもん」
「蓮の反応に何度か吹き出しそうになったけどな」
頬を膨らませ
「酷い…」
「だから持ち帰りされずに客から逃げれたんだろ?」
「…感謝してる。でも、あの日ここに来てなかったら会えてなかったんだね。ゆ…お兄ちゃんが家を出てからどこにいるのか知らなかったし」
「それはお互い様だろ?この家出娘が」
指先で額を弾かれ
「いたっ…何するの?」
涙目で顔をしかめる。
「でもお陰で蓮を見つける事ができたけど…」
小さく呟いた声が聞き取れなくて
「何か言った?」
不思議そうに見上げると優しい笑みを浮かべて髪を撫で
「何でもないよ」
頬に指先が触れて悠の唇が近くなると突然のチャイム音に邪魔される。
インターフォンに悠が対応すると勢いよくドアが開き、鼻につく甘ったるい香水の匂いが漂う。
悠に馴れ馴れしく話す女が隣に座ると蓮はカクテルを一気に飲み干して
「帰るね」
バッグを掴んで立ち上がると
「下まで送るよ」
帰ろうとする蓮の背中を追いかける悠と一緒に店の外に出た。
「お客さん待たせても大丈夫なの?明らかにお兄ちゃん目当てじゃない…」
「少しくらい放っておいても大丈夫だよ。もしかして妬いてるのか?」
「妬いてるわけないじゃない」
思わず強く発した言葉に蓮は顔を赤らめて背中を向けた。
後ろから抱きしめられ、耳元で優しく
「拗ねるなよ。仕事なんだから仕方ないだろ?」
「わかってる…別にそんなんじゃないよ…」
「ほら、お兄ちゃんにおやすみのキスは?」

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