
エスキス アムール
第13章 トラップトラップ
「彼、
どこの大学出ているか知ってる?
東大よ。私と同じ。
エリートなの。
あの年齢で社長候補としても上がってるのよ?
それをね、
こんなところに
お金をつぎ込んでいることがバレたら
どうなると思う?
あの人の未来お先真っ暗よ。」
「……」
彼女が言う事は正論だった。
わかっている。
大野さんが
どれだけ地位がある人なのかも
私とは違って頭が良いってことも。
……優しいってことも
全部わかってる。
わかっているけど、
彼から離れられなかった。
それは、優しい彼に
甘えていたからだ。
「波留から離れなさい。」
「…」
「…聞いているの?」
「波留から離れて。
…もしも
今後会うようなことがあったら…」
彼女は、
黙ったままうつむく
私の顎をグイっとつかみ、
私を上に向かせると
顔を近づけて
なんとも恐ろしい言葉を
囁いた。
「…私が、全部
世間に波留のこと、バラすわよ」
