
エスキス アムール
第14章 冷たい身体
「私は、風俗嬢ですよ?
よくいるんです。
こうやって、勘違いしちゃう人。
私、仕事とプライベートは
分けてるんです。
確かに、大野さんは優しいけど、
お客さんに変わりありません。
そういう目で見ているのなら、
もう、
お店には来ないで下さい。」
どうか。
どうか。
私のことを嫌いになって。
好きだなんて、
言わないで。
忘れられなくなっちゃうから。
「……」
大野さんの瞳は
切なげにゆらゆらと
揺れた。
その瞳を見ることができない。
「……っ!」
私は、
何も言わない大野さんの腕を
引っ張って、
ベッドに押し倒した。
「…はる…っ」
何か言葉を発しようとする
彼の唇を塞ぐ。
彼は、肩をつかんで
私を離した。
そうして唇が離れると、
顔を背ける。
私に
キスをするなという、
大野さんが見せた
初めての拒絶だった。
