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エスキス アムール

第36章 ファースト キッス






「……………へ、?」


あまりにも唐突なお願いに
情けない声を出して彼女を見つめる。

俺が出したのは珈琲で。
アルコールは入ってないよな。

うん、入ってない。


さっき俺が飲んでたバーボンを間違えて
入れちゃったってことは…


ないよな。


うん。




てことは、

「………どういうこと?!」




意味がわからない。



意味がわからない。
どうしたの?急に。

星の王子様で、キスを誘うような
言葉はないはずだ。

俺、他になんかいらないこと
言ったっけ?

いや、言ってないはずだ。


パニックになる俺を尻目に
彼女は顔を赤らめながら真剣な眼差しで

こちらを見つめて
言った。


「ずっと、ずっと、
波留くんが好きだったの。

だから、
ファーストキスは波留くんがいい。」



「………え、あの、いや。」


「社長には、
私から土下座して謝るから!」


いや、待て。
そういうことじゃない。

どちらかというと、
この場合大切なのは

木更津ではなくて、

彼女と俺の気持ちだ。


「波留くんに気持ちがなくてもいいの。
ファーストキスは波留くんがいいから。

お願い。お願いします。」



彼女は深々と頭を下げた。

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