
エスキス アムール
第40章 親友と部下
「今日はこの布団を使って」
「ありがとうございます。」
ソファで寝てしまった大野さんは起きそうに無い。
運ぶにしても、
木更津さんと大野さんの身長差は5cm程度で、170cm代の成人男性を運べるわけもない。
おそらく大野さんは、ソファで朝を迎えるのだろう。
木更津さんは、
リビングの隣にある個室に布団を敷いてくれた。
風呂から寝床まで、申し訳ない。
すみませんと言うと、優しく笑って遠慮しないでと言ってくれた。
この人の部下も、最高だろうなと思う。
きっと社員思いのいい会社なのだろう。
木更津製薬は、社員の会社満足度が確か3位にランクインしていた気がする。
それも、彼の手腕と人柄があってこそだ。
おやすみなさいと挨拶を交わし、
布団に入ってしばらくすると、まだリビングから光が漏れているのがわかった。
何かしているのだろうか。
手伝うことないかな。
そう思って、そっとドアを開けてリビンを覗いて見る。
何か手伝うこと…と、
出そうになった声を慌てて止めた。
「はーるくん」
「ん…ん、…」
「ふふ…可愛い」
ソファに寝てしまった大野さんを、
顔の前で床に座って見つめる木更津さん。
名前を愛しそうに呼びながら、
頬をつんつんしたり、
鼻を擦り付けたりしている。
こんなラブシーン、
覗くものじゃないと扉を閉めようとするけど、自分の欲に負けた。
思わず見入ってしまう。
木更津さんの行為に、
大野さんは声を漏らして身じろぐ。
やっぱり見てはいけないものを見ている。
そう思うけど、やっぱり目がそらせない。
他人のラブシーンなんて、早々見られるものじゃないんだから。
