
バラードは君だけに
第13章 どんなに遠く離れても
私がカウンターで食器を洗っていると、時々中村さんの視線を感じる。
テーブル式のゲームに熱中しながらも、私を気にしているのがわかる。
中村さんは温厚で真面目な男性。
きっと、こういう人とつきあったら幸せになれるのかな、なんてふと思った。
ーーーー
閉店十五分前になると、私は店じまいを始める。
入り口の電灯を消し、外に出したマットをはたいて中に入れる。
マスターはお客さんもいないので、中古車の雑誌を熱心に読んでいた。
私はテーブルのシュガーを補充したりしていた。
カラン…
その時、店に誰かが入って来た。
私は振り返って
「すみません、もう終わりなんです…けど…」
と言ったまま固まる。
「やっと見つけた」
「…どうして…」
何が起きたのかわからなかった。
そこには、湊さんがいた。
