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センシティブ♥ボーイ

第26章 ちょっと距離を置こうか。







ふと、ガラス窓に映る自分が視界に入った。
自分越しに真由美さんを見つめる。



「……ちがう…ぜんぜん」



ああ…こんなに違うんだ…


そういえば、鈴木くんといるときはいっつも夢中で気がつかなかった。

一緒にいるところを客観的に見たことなんてなかった。



「とっても…お似合いだなぁ…っ」


気が付くべきだったんだ…最初から…




鈴木くんは優しい。
とってもやさしい。

きっと優しいから…僕が面倒臭くても、僕に別れてって…言えなくなっちゃったんだね…


こうやって土日は、いっつも真由美さんと会っていたんだね…



「……ぅ………」


自分の手に雫がポタポタと落ちる。
窓ガラスを覗くと、自分の頬にいくつも線が作られていた。

下に視線を落とすと、いくつもの雫が落ちた跡が点々とついている。


笑顔の鈴木くんを見ると幸せな気持ちになれるはずなのに、

余計に涙が溢れて視界が滲んでいく。



「うぅ…っぅ…」




恋をするってとっても哀しいんだ。
誰かを想うって…とっても哀しいことなんだ。



「すずきくん…すき…っすきだよぉ…っ」



恋人でなくなったら何になるんだろう。
僕たちは友達に…なるの?
それとも…僕たちは…


もう。




「女の子だったら…よかったのかなあ…っ」



初めて思ったことを初めて口にした。


「もう、一人は嫌だよ…っ」



鈴木くんを知っちゃったんだもん。
鈴木くんがそばにいてくれないと、もう嫌なんだよ。

置いてかないで。
鈴木くん…。


笑い合う二人がとってもとっても遠くに感じて。
手を伸ばしたって届きそうになかった。




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