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小春食堂【ARS】

第39章 小春食堂【小春】

この頃には、さすがに大野さんに会うことは心の底ではあきらめていた。

それならば、大野さんと同じ東京の空の下、ひっそりと暮らしていきたい。
そう思っていた。

結局、大野さんと会ったのはあの5日間だけ。

それを何年間も思い続けている自分にあきれる。

京都を捨てて、東京に来て。

会えるあてもないのに。

重い女や。

それでも、店の戸を開けて大野さんが入ってくるのではないかと期待する自分がいる。

まるで、糸を張った女郎蜘蛛や。

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