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少女グレイスと森の魔女

第9章 夜が明けるまで

62『誰も知らない』


「せっかく忠告してやったのになんて娘だい!
この歳で細かい字を書くのに骨を折ったというのに!」

老婆は1人で怒りをぶちまけ、グレイスは呆気にとられている。


放心状態のグレイスに代わってヒゲの男が老婆に話しかける。


「…あんたとも会ったことがあるな」


「ふん!とうとう見つけたよ。全ての犯人はやはりあんただったか」


「やはり、だと?」


「あんた町長なんだろ?町の長が何をやっているんだ!森が泣いているよ!」



「森が?
ふっ…まあいい。
私が何の犯人だというのかね?」


「町で起きている一連の行方不明者のことさね!」


「その犯人が私だと?
町で一番疑われているのはあんただよ、婆さん」



グレイスは立ち上がって男を指差す。

「この人!
向こうでクレアを、私の友達を埋めてた!
他の友達も…
きっとどこかに…」




「…で、話を戻すのだが誰がそんな話を信じるというのだね?私だという証拠はない」


「…なっ!
なんて人なの!
とぼけるつもり!?」



「とぼけるのではない。
今ここでこうしている私たち以外は誰も知らないことだと言っているのだよ」

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