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風景画

第18章  poemtory 〜記憶の扉は8秒間叩かれる




コツ―――…

額にかすかな痛み



コツ―――…

横たわったまま意識が目覚めた



目の前には丸く大きな瞳

そして

ふっくらと蹲る薄紫の体



お前…生きていたのか…!



くるくると目は動き

まばたきをしては咽喉を鳴らす



そうか、よかった

また空を飛べたんだな



コツ、コツ……

くちばしで柔らかく額をつつく



あの日

道端で倒れている一羽の鳩を

困惑と共に抱え上げたのを

覚えている



何が起きたのか

何をしたらいいのか

わからないまま

この手に委ねられた小さな命



狼狽える腕の中で

見上げる瞳と視線がからまり

体中を血が一気にかけめぐる



そして

あてのないまま歩きだしていた

何かに急かされるように…



けれど不思議なことに

頭の中はしんと静かだった







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