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ネムリヒメ.

第8章 雨.




お風呂から上がったアタシは着替えを済ませて、ぼんやりと窓の外を眺めていた

大粒の雨が木々の葉を打ち付け、滴が窓ガラスを伝って落ちていく


今日…雨の予報あったっけ…

まだ夕方のはずなのに外はもう真っ暗だった


あーあ…せっかく買ってもらったばっかりなのに、服…濡れちゃったな…

せっかく渚くんが選んでくれたのに…

ん!?

うん…いつもならここで、

゛せっかく渚くんが…゛とかなに言っちゃってるの、アタシ!!

って、突っ込みが入るんだけれど、なんだかそんな気持ちすら沸かない

傷だらけのせいなのか、落ち込む気分のせいなのか、ただ素直にそれが悲しい

さっきまでの彼との楽しい時間なんて、元々なかったのではないかという気さえしてくる


しょんぼりと肩を落としていると、突然ズキッと足元に痛みがはしった


「っ…たぁ…」


見れば両足の踵が擦りむけている

…ひどい靴擦れ

ぅわっ…しばらくヒール履けないかも…

そう思うとさらに気持ちが沈みこんだ


気がつけばカラダのあちこちが痛んで、傷口から血の滲んでいた

じくじくと鈍い痛みがついさっきまでのコトを甦らせる


やだやだ…

怖かった……

思い出したくない!!


アタシいつからこんなにメンタル弱かったっけ…


首を横に振りながら手をきつく握りしめて、唇を噛み締めた




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