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ネムリヒメ.

第9章 イチゴ味の夜と….





葵くんは少し屈んで目線を合わせると、アタシの顔を正面から捉えた


「…ホントはそうじゃないでしょ?」


「っ…!!」


思いもよらぬ彼の言葉と優しい微笑みに胸が支えて言葉が詰まる


きっとこの時、泣きそうな顔をしていたんだと思う





「もう、素直に言えばいいのに…」




卵を抱えるように葵くんはアタシの頭をそっと抱き寄せた


「もう、困るくらいわがまま言ってくれていいんだよ!? いくらでも聞いてあげるから」


黙ったまま肩を震わせるアタシをあやすように頭を撫でてくれる彼



「…眠れない?」



「っ怖い……」


「…うん」



「ひとりで眠るの…怖い…」


「…うん」



彼の温かい体温がアタシの心をハダカにしていく


黙って返事だけをしてくれる葵くんのシャツが、アタシの涙で冷たく濡れていく





「じゃあさ…」



そっと葵くんがアタシから離れる


「これからオレと出かけちゃおっか!?」


「ぇ…」



思いの外明るい彼の声と意外な言葉に顔をあげると、目の前で葵くんが何かをちらつかせた




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