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ネムリヒメ.

第3章 無くしたモノ.






「ちーちゃん、息吸ったら止めて」


「…んんっ」


「止めて」


「…っ」


「10数えながらゆっくり吐いて…」


「はぁ…っ」



…最初は苦しくてなんども呼吸が乱れた

それでも なんどか繰り返すうちに、だんだんと聖くんの綺麗な丸アーモンド型の目の輪郭がはっきりとしてくる


アタシの涙と汗で顔に張り付いた髪をそっと拭いながら時々、大丈夫…と、まるで呪文のように彼が囁く


背中をさする彼の温かい手と優しい笑顔が不安定なアタシを導いてくれて



ようやく落ち着く頃には

テーブルの上のアイスクリームは

完全にとろけていた



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