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ネムリヒメ.

第23章 薔薇の刺、棘の鎖.







「望…なに言って…」


"早くいきなよ"

"じゃないとヤバイよ…お前の、姫が♡"


雅は目の前でニヤリと笑うオトコの言葉に耳を疑った


「ん!? なにって…あぁ♪ゴメーン、間違えた」

「…あ!?」


春の夜のプールサイド

そこで眩しいオーラを放つオトコがふたり、睨み合っている

ただならぬ存在感を放つ雅と、それに引けを取らない望と呼ばれるオトコ


「お前のじゃなくて、オレの姫♡だった」


望はサングラスの奥の瞳をスッと細めるとウォーターガンの先で、雫の滴る雅の前髪を持ち上げる


「……おい」

「え、なに」

「なに、じゃねぇ…っ」


完璧に機嫌を損ねた雅


「聞いてんのはそこじゃねぇよ」

「えー、違うの!? でも、オレの姫だし」

「………」


っ…こんなヤツに構ってるヒマなんてねぇ

落ち着け、オレ


苛立つ雅の前髪を悪戯に上下に揺らしながら、望から返ってくる軽口

神経を逆撫でされ、いつもなら容赦なく胸ぐらを捻り上げるところだか、今はそれどころじゃない雅はぐっと堪える


しかし、


「ね…ヤんないの、雅」

「………!?」


目の前のオトコは、あろうことかケンカをふっかけてくるわけで


「久しぶりに遊ぼうよ、最近カラダ鈍ってるんだよね…ちょっと暴れたいから付き合って♪」


指をパキパキと鳴らしながらニヤリと笑い、雅をファイトに誘ってくる

だが、そんな余裕は今の雅には持ち合わせてはいない

雅は鋭い眼差しで望を睨み付けた





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