テキストサイズ

ネムリヒメ.

第23章 薔薇の刺、棘の鎖.









突きつけられた恐怖に、その引き金が引かれなくとも早鐘を打ち続ける心臓が止まりそうだ


電話口の向こう側には渚くんがいるのに…

届きそうで届かない

伝えることができない

もどかしくて、ツラい

苦しさに悲しみに似た感情が溢れだす


それなのに…


恐怖と絶望のどん底にいるにも関わらず、蜜を溢れさせる快楽の源泉が渇れることはなかった

残酷にも心中とは裏腹に、その手で触れて、そして硬い何かで満たして貰えるのは今か今かと、絶えず悲願の涙を流し続けている


声を出すのを許されぬまま疼きを増すカラダに息を荒らげる

そんなアタシの瞳からは涙が溢れ頬を濡らしていた

この涙は、ここからの解放を望む理性の涙なのか、それとも快楽に溺れ求める本能の涙なのか…

理性と本能が葛藤してごちゃごちゃに混ざりあっている


『…取り込み中だ!?』

「お陰様で忙しいんだよ、お・し・ご・と♪オレ…真面目だから」

『真面目って…どの口が言ってんだ』

「んー、この口♪」


オトコは渚くんの声にチュッと軽くリップ音を返すと、ベッドの上へ静かに携帯電話を置いた

置かれたのはそれだけだ

もう片方にはトリガーを引けばすぐに弾が発射される状態の拳銃がこっちを向いたまま握られている

そしてオトコの妖しい視線もこっちを向いていた


「もう…話してる余裕なんて、ない状態」

「ふ…ッ────!!」


意味深な笑みを添え、伸ばされた手が硬く上を向いた胸の突起をつまみあげる





ストーリーメニュー

TOPTOPへ