テキストサイズ

ネムリヒメ.

第24章  Get back.







…………




望をミルクティーで黙らせ、雅に天誅を下した渚はフロアを足早に見渡しながら一向に誰からも着信を告げない携帯電話に不安を過らせていた

それに加え、募る焦りと苛立ち

セキュリティカメラはチェックした

施設内各所のスタッフにも声をかけた

葵たちもフロアを走り回っているだろう

しかし、いくら広い館内といえど隅々まで構造を知り尽くした自分を含め、あらゆる方向からこれだけ探しても千隼がみつからない


どうすりゃいいんだ

マジでどこにいるんだっつーの


時間が経てば経つほどに気持ちが乱れ、次第に己の冷静さが欠かれていくのを感じる

渚は乱れる気持ちを一度落ち着かせたくて、スーツのジャケットからタバコを取り出そうとする


が、


「っ…!?」


差し込んだ内ポケットのなかで虚しくも手が泳いだ

そこで初めてタバコとライターを部屋においてきたことに気がつく渚

その途端、何かに弾かれたように彼はハッとする


もしかしたら千隼は部屋に戻ってるのではないか…

一瞬、そんなことが脳裏に浮かんだ


しかし、

いや…まさか、な…

彼女はルームキーを持っていないのだ

千隼に渡したルームキーは今自分が手にしているこのクラッチバックのなかにあるし、

通常ならルームキーを持たない者が部屋に入ることはおろか、そのフロアにすら行くことはできないはずだ





ストーリーメニュー

TOPTOPへ