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ネムリヒメ.

第24章  Get back.








「…………葵、死ね」


悲しくも情けなくもされるがままの葵の悲鳴も、だんだんと淫靡さを増してオンナたちに絡みつかれる音も返事さえしなかったが渚の耳にははっきりと届いていた


ったく、どうしようもねぇ…


渚は自分の庭の泥沼にのみ込まれていく葵に向かってそうひと言だけ吐き捨てると、溜め息すら出ないまま瞳を伏せ、通話を終了させた携帯電話を胸のなかへとしまった

乱れる気持ちを落ち着かせようとしていた矢先だったが、吹き出し始めるカオスをなんとか理性で封じ込める


残るのは未だになにも連絡のない聖

聖の顔もけして狭いわけではない

人形みたいな顔に知性と品位を兼ね備えたオトコだ

しかも甘え上手で御曹司とくりゃが周りが放っておくわけがないだろう

しかし、聖に寄ってくるのは女性ばかりではない

人心掌握術を巧みに使いこなす聖

彼には渚たちにさえ見せない顔があるのだ


甘いものを目一杯口に詰め込みながらシャンパンを片手にスイートの一角で、接触してきた取引相手と称する人物から受け取ったアタッシュケースを前に黒い笑顔で頬笑む聖の姿をよく見かける

…聖には謎が多い


ただ確かなのは、

可愛い顔してお前はいったい何をやって…

度々思わずそんなツッコミを入れたくはなるが、触れない方が間違いなく身のためであるということは明確で…


とまあ渚の頭に一瞬、天使の顔をした悪魔の姿が思い浮かんだが、誰よりも要領のいい聖なら足止めの心配はないだろう





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