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ネムリヒメ.

第25章 Black Emperor.





「しかも、なにそのテンプレ。今さらそんな嫌がらせ流行んないデショ。あー、ツマンナイ」


そのまま望はオレたちを横目に、読んでいたマンガをパタンとテーブルに投げ置くと退屈そうに大きなあくびをかました


「若葉ちゃん頭軽すぎ。だから相手にしてもらえないんだよ、少し学習しなよ」

「なッ…」


珍しい、望…

普段なら葵くんに構われようとも、雅に嫌味を言われようとも、どんな環境下に置かれても自ら大航海を中断することなんてないのに

…って、ことは──


「そんなコトでオレの手までワズラワセルナ」


あ…

………

………遅かった。


これはもしや…なんて思っている矢先、目の前にミルクティの雨が降り注いだ

目の前の若葉ちゃんの頭の先から茶色い雨が降らされる

立ち上がった望の手にはミルクティのグラス

しかも特大サイズのピッチャーだ

タピオカだけは綺麗に平らげたらしく、溶けて小さくなった氷と水っぽく薄まったミルクティが彼女のダークブラウンのストレートヘアを滑り落ちる

…そこそこの量の土砂降りだった


「…これで水も滴るイイオンナだから。その中身、もう少しなんとかしてよ」

「…………」


上下まっ白な装いで、兄譲りで夜景も霞む容姿…

どっからどう見ても天使のような美青年なのに、その笑えない立ち姿はどっからどう見ても魔王だった

蛙の子はカエル…

しかし、魔王の弟は魔王よりも魔王なのである




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