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ネムリヒメ.

第25章 Black Emperor.





「ッ…く…可愛くな…」

「あぁ、その顔、その顔。…す───っごい不細工」

「…!!」


そこで頬を横から潰されながらも物凄い形相に顔歪めた若葉ちゃんに、それを優に上回る罵倒の鉄槌が下った


「オレにそんな顔見せてくれちゃった後で、あんな狸と仲良くしちゃうんだもんね…。

ねーぇ、お馬鹿サン。
オレがどんな物好きで若葉ちゃんのお守り黙って押し付けられて、いいように振り回されてあげてたと思ってるの!?

カジノの雑踏に紛れればバレないと思ったみたいだけど、オレの目を欺くならお願いだからもっと上手くやってよ…。

お蔭で人前で笑い堪えるのに必死で、バカラでチップ破産させちゃったんだけど」


望はクツクツと思い出し笑いを…って、あぁ…

本人はしてるつもりなんだろうけど、第三者から見たその顔は笑ってるとはおおよそ言い難い、それはもう酷い様だった


「…それよりも、ねーぇ…

やるコトなすコト全部詰めが甘いクセに…

自分がいったいどこの誰を相手にケンカ売ったのか、ちゃんとわかってるんだよね」


不意に笑うのをやめ、オレが滑らせた鍵を手に取るなり唐突にそんな質問を投げ掛ける望

言葉と言葉の隙間に置かれた絶妙な間が半端ない圧力を生んで、その整った美しい容姿ゆえにとにかくとんでもなく恐ろしい


─といっても、若葉ちゃんがケンカを吹っ掛けた相手は、かの"紫堂 渚"…


よく考えれば命知らずも甚だしいことだった




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