テキストサイズ

ネムリヒメ.

第27章 ***





「───ッ…!!」


葵くんにそう聞かされたときにはもう、部屋を飛び出そうとアタシは立ち上がっていた


"渚くんはなんのために部屋を出たのかなぁ♪
セメント取りに行ったんじゃないの?郁くんを海に沈めるためのセメント取りにいったんじゃないの?"


"おい、郁……
海に沈む前に言っときたいことはそれだけか?"


"…話になんねぇ。聖、あとは適当に郁(ソイツ)のこと片づけといて…"


──ダメッ…!!


あれからどれくらい時間がたったかわからないけれど…


──待って…


今さら気づいたところで、それがまさかであってほしいとしか言いようがないけれど…

もうすでに立ちまくっていた妙にリアルで危険すぎるフラグに頭のなかが真っ暗に暗転する


あの人は…

郁さんはアタシにとって"知らない人"なんかじゃない


むしろ…


「待っ…」


彼は…ッ…


「…てッ!!!」

「ッ…、…ぶな!!お願いだから無茶しないで!!」

「っやあ‼放し、てッ…」


途中、ベッドから引きずってしまったシーツに足を取られて躓いた


でも──


「ちーちゃんっ…!!」

「…っ、郁さんは!?ねぇ、郁さんはどこにいるのっ?郁さんは…ッ…」


…このとき、アタシはなにも考えてなかったんだと思う


自分のことだけで…

葵くんは愚か

周りなんて全然見えてなくて


倒れる寸前で葵くんが助けてくれたけど、その手をもアタシは振り払おうとしたんだ






ストーリーメニュー

TOPTOPへ