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未知夢

第8章 時間

「せやけど……あの先生、先月に別の所に移りはったはずやけどなぁ……」と、大柄で丸坊主のサングラス男が言った。


 最悪である。


(そりゃ、ヤクザが所有するビルにある相談所に、誰が人生相談に来るんだっての。てか、先生……もう1ヶ月延ばせよ……)と、思った。


「おい、だったらワレ、このビルになんの用じゃ!?」


 火に油と乾かした新聞紙を一緒に入れてしまった。


「ここに何しに来てるんや?」


 目を合わせられない。それどころか、脂汗がジワッと滲み出る。


(頼む……時間よ戻れ……さっきのように……)


 繁は祈るようにポケットに手を入れた。


 あれがなんとかしてくれるかも?



 だが……




 石がない。




 捕虜になった者の気持ちが、いま、わかった。



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