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お嬢様♡レッスン

第9章 執事の思惑Ⅰ(高月編)

「おはよう御座います、お嬢様」

そう言って颯爽と現れたのは、本日のレッスンを担当する高月だった。

「昨日は随分とお楽しみだった様ですね?」

意味深な笑みを浮かべながら、高月はアーリィモーニングティを煎れ、ベッドサイドのテーブル
へと置く。

「何が言いたいんですか?」

綾芽はカップを手に取り落ち着いた様子でそう返した。

「いえ、あれだけ恥じらっていたお嬢様が、腰が砕けるまで、セックスをお楽しみになるとは、ご成長されたのだと感慨深いものがありましたので…」

高月は胸に手を当て目を瞑り、感慨深さを味わっているかの様なポーズをわざとらしくとって見せる。

「他の執事達も驚いておりましたよ?『あの葛城さんが』ってね?どんな魔法をお使いになったのです?」

「別に特に何もしてませんけど?」

澄ました顔をして受け答えをする綾芽に、高月は苛立ちを覚えるが、長年の執事としての顔は、その苛立ちを表には出さない。

昨日までの綾芽なら、向きになったり、恥じらったりしていた筈だ。

葛城に抱かれて“女”になったとは言え、ここ迄変わるものなのだろうか?

「お嬢様、本日は落ち着いていらっしゃいますね。やはり女性としての悦びを知って、余裕が出ていらしたのでしょうね?」

高月は綾芽の耳に唇を寄せ、彼女の神経を逆撫でする様に言い反応を見る。

綾芽は『さぁ、どうでしょうね?』と惚けて見せ、お茶を飲み干すと、ベッドから降り立った。

「着替えます」

「それでは、お手伝いを致しましょう」

「結構です。自分で出来ます」

「恥じらって居らっしゃるのですか?」

「違います。……高月、これは命令よ?出て行きなさい」

高月のペースに載せられる事無く、毅然とした態度で綾芽はそう言い放つ。

中々付け入る隙を見せない綾芽の態度に高月は目を丸くした。

本来なら、主の主たる成長を喜ぶべきなのだろうが、それが他の男の手に寄る物だと思うと、些か面白くない。

どんな手を使って葛城が綾芽を陥落させたのかは分からないが、自分は自分のやり方で綾芽を“調教”せねばならない。

幸い“女としての悦び”を知った後だ。

女は欲深い。

更なる快楽を与えれば、また優位に立つ事も可能だろう。

高月はそう考えた。

(ここは一旦引き下がるか…)

「ご命令とあれば」

そう言って高月は綾芽の部屋を出て行った。

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