誰かお願いつかまえて
第9章 女たちの戦い
――岡崎 優也side――
「分かりました。仕事では、波香のことよろしくお願いします。
……これだけ想っても気づかない女のことをそれでも想いつづけるなんて同情しますよ」
落ち着いた柚原さんは苦笑してそう言った。
「あり―」
「ですが!!」
川端が礼を言おうとするのを遮られた。彼女の瞳は意地悪そうな色を浮かべている。
「ですが……いくらあの子が鈍感だからって、手を出すのは許さないから」
黒いオーラに俺も思わず姿勢を正してしまった。
……苦手だ、この人。いい人なんだろうけど。
「もも、もちろんです!!」
川端は狼狽えすぎだろ…
「分かってますよ」
俺が返事をするとさっと表情を変えてニコリと笑う彼女。
「ならいいです!…じゃ、波香の準備が終わるまで下でお待ちください」
「え、俺たち下にいていいんですか?さっき出ていった人には急いでここまで連れてこられましたけど…」
俺と同じ疑問を川端が投げかけると
「人は基本的にイケメンには寛容なので」
……悪寒が。
褒められたはずなのに良い気がしないのはなぜだ?
俺の目の前の女性は変わらずに微笑んでいた。
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