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君と僕の見ている風景

第10章 誕生

翔「ふぅっ、ふぅっ」


分娩室に入ると、分娩台の上で翔が息を切らしていた。


「っっ…」


分娩台の回りは…翔の物だろうか。おびただしい量の出血と、それを吸い込んだガーゼ。
翔には酸素マスクを付けられていた。


「翔…!」


一瞬怯んでしまった自分が情けない。
俺は心を奮い立たせて翔の元に駆け寄った。


翔「じゅ…潤…来たの…」


「当たり前だろ。大丈夫か?俺着いてるからな」


翔「うん…!」


疲れきっていた翔の瞳に光が宿った気がした。


医師「松本さん。赤ちゃん降りて来ましたよ。息めますか?」


翔「はい…!」


翔の手を握り、翔が強い力で握り締める。


医師「はい。息んで!」


「ふぅっ、ふぅっ、んんんーっっ!!」


潤「頑張れ!」


翔の爪が俺の手に食い込む。


「翔。呼吸ゆっくり。ひーひーふーだよ」


翔「う、んっっ…ひーひーふぅ…」


呼吸を整えると、再び波が来た様で。


翔「ふぅっ、ふーっっ、んんーっっ!!」


医師「頭出て来たよ!最後もう一息!」


翔「ふーっっ、ふー、んんんーっっ!んぁぁっっ!!」


翔が悲鳴に近い声で叫んだと同時だった。


「おぎゃぁ…おぎゃぁ…」


分娩室に元気な泣き声が響く。


翔「はぁっ…はぁっ…」


医師「産まれましたよ!」


先生が赤ちゃんを取り上げ、看護師さんに渡す。
看護師さんが手早く処置をする姿を俺達はぼんやりと見つめていた。


看護師「はい松本さん。お子様ですよ」


産着を着せられた赤ちゃんが翔の手元にやって来た。
翔は愛しそうに…赤ちゃんを抱いた。


翔「………赤ちゃん。俺達の…」


「うん」


翔「………潤そっくり。目と…この眉毛」


「………ほんとだ」


産まれて来たその子供は…赤ん坊の頃の写真の俺にそっくりで。


「………ぐすっ…」


翔「潤…?」


………ヤバい。涙が止まらない。


「翔…ありがとう。本当に…ありがとう」


翔「………うん」


俺は涙を拭い、大仕事を努めてくれた愛する妻にキスをした。

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