
甘く、苦く
第46章 磁石【move on now】session1
あ、やばい。
本格的に迷ったっぽいな。
…大野さん家、どこだっけな…
フラフラっと歩いてたら、
いつもの道に出た。
……ここか。
ー ピンポーン♪ ー
「はーい」
「あ、櫻井です。」
「開けたから入って~」
緩い大野さん。
いつもみたいにお茶を飲みながら
他愛もない話をして。
「で、妻のことなんですけど…」
「あぁ、奥さん、保険に入っていたので
お金の件は大丈夫ですよ」
「ほんとですか?」
大野さんは「ありがたいです」
って俺の顔を見て笑う。
俺と少ししか年齢が違わないのに
奥さんを亡くすなんて……
俺だったら耐えられない。
てか、奥さんなんていねーけどよ笑
「はい、じゃあまた来ますね
お体に気を付けて」
「櫻井さん、さようなら」
大野さんは深々と頭を下げた。
……さて、えらい話し込んじゃったな。
もうお昼の時間だわ。
二宮は…大丈夫かな。
「翔ちゃん、またオムライス?」
「悪いかよ。俺はこれが好きなんだよ」
雅紀が「子供みたい」って
呟いた。
「うっせぇな…」
「くふふ、」
「キモい笑い方すんな」
「ひどーいっ!」
雅紀は唇を尖らせて
ぶーぶー言い始める。
お前の方がよっぽど
子供だろ。
なんて思ったのは秘密。
