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秘密

第28章 悩

※大野side

[ピーポーピーポー]

食後まだ完全に起きてないルナが
俺に寄りかかってる

遠くで鳴ってる救急車のサイレン

「いつから悲しくならなくなるんだろうね…」

悲しくならなくなる?

「人が怪我とか病気で苦しんで運ばれてるのに…あの音をなんとも思わない…なんで…」


一点を見つめたまま話すルナ

あぁこの子はどこまでも純粋なんだろう

「きっと聞き慣れちゃったからだよ。聞き慣れちゃいけないのかもしれないけど」



ここでふと思った
あの時の歌…
あの…英語で歌ってた歌…

確か和訳は

"一回目は「助けて」が聞こえる
でもそれはそのうち「騒音」になる
そして「騒音」は「静寂」になっていく"


あの時のルナの気持ちとは違うけど
この歌詞と今の状況が完全にリンクした


「ルナは運ばれないでね」

重くなったこの空気が嫌でちょっとふざけてみた

「運ばれないよw」



「そういえばルナ、最近大丈夫?」

「なにがー?」

「お仕事、疲れてない?」

「疲れてないよ、好きなことやれてるから…でも」

「でも?」

「たくさん会えないのは寂しい」


よかった…
ルナも同じ気持ちだったんだ

「俺も寂しいよ、」




[ピーンポーン]

お昼前か…
最初のお泊まりからこの時間にお迎えが来る

インターホンの向こうにいたのは案の定さっくんで

ルナは拗ねながらもリュックを背負った

「ルナ、またね?」

「バイバイ大ちゃん」

うつむきながら言うから
しゃがんでルナと目線を合わせて

「ルナ…愛してるよ」

愛してる。俺が初めて女の人に言った言葉
こういう言葉って
勝手に口から出ていくもんなんだなぁ

「大ちゃん…」

ルナがチュッとほっぺにキスをしてくれた

「ありがと!」

よかった、笑顔に戻って

俺らは玄関まで手をつないでいった

車が見えなくなるまで見送って鍵をかける




この時間が1番しょんぼりする

ほっぺに残る感覚だけが唯一の癒しだった
思い出すたびニヤける口元を隠しきれないくらい




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