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秘密中毒

第13章 目撃



山田くんはあたしの肩を持つ手に力を込めて、ちょっとだけ口の端を上げて言った。

「旦那も、俺も欲しいか。欲張りなやつ…

でもやっと正直になったな」


すぐに唇が下りてくる。

「ってちょっと待って、すぐすぎるでしょ!」

「何?」

「あの、今日はその、疲れてて、あの!」

「ああ……車で最後までするとでも期待した?

昼間あんだけしたのにやっぱり欲張りだな、あやとりは」


山田くんがあたしを覗き込んでニヤリとする。
もうあたし、いつものペースに巻き込まれてる。

「そっ、そういうわけじゃないけど!!」


さっきあの人に触れられたままなのが気になっていた。

洗い流したってそう変わらないあたしだとしても、せめてそうしたかった。


「…いろいろあったって顔してるしな。今夜はま、いいか。」

山田くんの言葉にほっとして身体の力を抜いたとき

「これで」

と唇を奪われる。

「んー!!」

びっくりして抗うのも最初だけで。
結局あたしは山田くんの長いキスを受け止めて、頭の中までしびれさせてしまった。

……
抱きしめられてキスされるだけで、気持ちいい。

キスの間に鎖骨をなぞる指、背中をまさぐる手のひらから、ぞくぞくと快感がわきあがる。

もっとそうしていたくて、もっとじかに触れあいたくて、切なくてどうしようもなくて。


「あやとり、疲れてるとか言ってその顔…エロいぞ」

と言われてしまうほど陶酔したあとに、次に会う約束をしたのだった。


アパートに近い角の手前で車を降りる。

(飛び出してから2時間たってる。あの人はどうしてるかな。)

あたしを探しに出て、山田くんの車でキスするところを見てたなんて、その時のあたしには思いもよらないことだった。


…………
…………

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