テキストサイズ

秘密中毒

第13章 目撃



「本当に」?「遊び相手なのか」?

その聞き方で、山田くんがそう言ったんだと分かった。


あたしの思考を読んだみたいにあの人が言う。

「車が動いたから追いかけたら、うちの近くで君を降ろした後に追いついた。

アヤの夫だって名乗ったら…

あいつ驚きもしないで、

君とは割り切った遊び相手だから心配するな、と言ったんだ。」


ズキン。

「そう…だよ。

 『遊び相手』なの。」



あの人はちょっとほっとしたような、それでいてがっかりしたようなため息をついて。

「君がそんなこと言うなんてな。でもそうさせたのは僕なんだよな。」

「…ちがう、あたしがずるいの。

あたしが、ちゃんとしてないから…。」


ちゃんとさせようと思ったのが、今日なんだけど。

いろいろありすぎて、わけがわからない。


「あいつが落ち着いてるのが気に障ってね。思わず殴った。あいつは避けもしなかったよ。」

あの人はまたひとつため息をついてから立ち上がって、あたしの前に来る。

光の灯る目で、あたしを見つめてゆっくりと告げた。

「就職試験のことも黙ってて悪かったし、夫婦生活のこともあいまいにして悪かった。
それに…さっきは、自分を見失ってた。

謝ることばかりだけど、君を失いたくない。

もう一度申し込むよ。一緒にアメリカに来てくれ。」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ