
秘密中毒
第9章 お礼
「すんませんでしたっっっ!!」
(―――え?)
「僕、酔ってるのをいいことにあんな…あんな…」
葛西くんは月曜に会う前に謝りたくて
桜にあたしの番号を聞いたらしい。
「いや、川崎さんとのことは偶然見ちゃったんすけど、
脅してどうこうするつもりとか全然なくて、
つねづね水谷さんいいな~って思ってたからその、
酔った勢いで願望が出ちゃったっつうか…
とにかくすんませんでした……!」
受話器を持ちながら葛西くんが頭を下げてるのが目に浮かぶ。
「…もう、いいよ。
あたしも悪いことしてたからこうなったんだし…」
「じゃあ、許してもらえるっすか?」
「うん…お互い忘れるってことでいいかな?」
「は、はい。忘れるのはもったいないすけど…」
「ん?」
「いえ!忘れます!なんで明日は安心して出社してください」
…………
(良かったぁ)
電話を切って、ソファにもたれながらため息をつく。
葛西くんの性格は知ってるつもりだったけれど
万が一また秘密をネタに迫られたりしたらって
不安はぬぐいきれなかったから。
(それはまあ、良かったんだけど、な……)
それよりも、電話に出た時の
山田くんの声じゃなかったがっかり感が
いつまでもいつまでも、あたしの中から消えなかった。
…………
……………………
