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キョウダイ

第14章 陽だまりの優しさ






「なにあれ〜」




「せっかく心配してんのにね?」





「周防くんてたまに怖いよね?」





いこいこう、女の子二人組がぶつぶつ言いながら、あたしの傍を通り過ぎる。





見覚えある、二人。





三年の校舎だった。




割れたガラスを野球部の人達が、文句を言いながら、片付けている。




明はいない。





誰もいない、教室にもいない。




廊下の一番奥に理科室があった。




扉に手を掛けると開いていた。




あたしは理科室の中に入った。




静まりかえった理科室の中に、聞こえる荒い息づかい。



はぁはぁ、時折ひきつるような息をする。




震えている後ろ姿が、やけに小さく見える。





「……来るな!」





目が合うと睨まれる、殺気だった視線。




誰も近付けないオーラを前開に放出して、うずくまっている明が、そこにいた。



あたしには分かっていた。




弱ってるところを人に見せたくない。




泣きたい時も泣かない。




プライドが高くて、いつもチャラいふりをして、ごまかしている。



どんなに苦しくても隠れて一人で我慢する。



誰にも心を開かない。



誰も信用していないし、信用されたいとも思ってない。



自分の両親にすら、そう思っている。



本当に甘えれたのは、あたしの本当のパパとママと奏ちゃん……。



あたしではない。



それが分かるから、凍り付いたように動けない。



こんな姿は見せたくない筈。



あたしには余計にそうなのかもしれない。



ぎゅっと目を閉じる。



……奏ちゃん……こんな時、どうすればいい?






しばらく時間が過ぎていった。



明の荒い息づかいが、少し落ち着く。



「何してんの?部活は?」



「明の姿が見えたから。ねぇ、明の病気はなおってないの?」



こんな事、聞かれたくないのかもしれない。



だけど黙っていられなかった。



海外に行って心臓の手術をして、お蔭で生き長らえたけど、いきなり激しい運動はできない、そういう話は聞いていた。



体育の授業はいつも見学。



時々体調を崩して学校を休んでいた。



その話を鵜呑みにしていたけど。




違うの?

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