テキストサイズ

キョウダイ

第18章 育ての親

柊斗side



「あら、あら、まあ、まあっ」

スマホを持つ母さんが何故だかにやにや笑っている。

土曜日なのに。

この家に葵がいない。

昨日から連絡つかない。

行方不明で連絡もつかないから悠ちゃんにも連絡して。

暫くしてから悠ちゃんから一言ラインがあった。

『葵が見つかった。俺が保護するから心配するな』

保護ってなんなわけ?

心配するに決まってるよね?

イライラしながら母さんにも相談したと言うのに。

この間抜けな反応。

「葵に電話するって言ってなかった?」

俺だって何度か電話したのに。

「したわよ葵のスマホに電話したのに、悠ちゃんが電話に出たのよ、悠ちゃん暫く葵を家に帰らせたくないみたいね?」

はあ?

なにそれ?

「それは悠ちゃんが勝手に言ってるんでしょ?
葵が言った言葉じゃないよね?」

「まあ、そうなんだけどね?
まだ葵ちゃん寝てるみたいだから……」

母さんが言いにくそうに口を濁す。

情けないけど俺は青ざめた。

とうとう悠ちゃんが、動き出した……。

賢い悠ちゃんの事だ。

きっと葵を洗脳させて家族をも味方につけて、外堀からじわじわ葵を逃げられないようにする筈だ。

なんて事だ……。

寝てるってもう昼過ぎだぞ。

こんな時間まで寝るって事は……。

目の前が真っ暗になる。

葵が悠ちゃんと……?

勝手にイメージしてしまう俺の不愉快な想像力にダメージを受ける。

思わず頭を抱えると台所のテーブルに座る海斗と目が合った。

いたのか。

何故だかほっとしてしまう。


『悠ちゃん暫く葵を家に帰らせたくないみたいね?』


本人がそう言ったのならそれは本当に実行されそうな気がする。

まずいよ。

「どうしよう、海斗」

相変わらず動揺したら喋らなくなる海斗に思わず言ってしまった。

母さんが珍しく用意してくれた朝食をもくもくと食べている。

大盛りのご飯に味噌汁、玉子焼き、焼き魚。

葵の作った朝食ならいつもご飯をおかわりするのに。

おかわりをせずに急に立ち上がる。

「……行ってくる」

短く一言。

「はあっ?」

ユラリとした冷気を纏い、食べ終わった食器を片付けてるけど。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ