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キョウダイ

第5章 戦いの火蓋

柊斗side


「遅いっ!悠ちゃん遅いと思わない?」


リビングの壁時計を睨みつけて、叫ぶ。


明日はテストがあるんだけど、それどころじゃない。


海斗に向かって言ったんだけどね。


むっつり黙り込んでいる。


まぁ、無理もないかな。


海斗が悪い。


何もかも。


いつだって、いつでも。


俺達がずっと我慢していた、越えてはいけない一線を越えてしまった。


骨折ぐらいじゃすまないよ。


自業自得だ。



真っ白な三角斤に吊るされている、腕が痛々しいけど。


悠ちゃんは日頃おっとりしてるように見えるけど、実は一番恐い。


何を考えているのか分からない。



頭がいいから余計に不気味だ。



そんな人が、弁護士になるんだったら、最強だね。


絶対敵わない。


そんな法律あるの?


って事まで平気で言いそうだ。


やだやだ。


ぷるぷるっと首を振る。


さっきまでひどい状態だったリビングで、レトルトのカレーライスを食べた。


嵐が去った静けさ。


正にその通りで。


いろんなものが壊れて割れたりした残骸を片づけるのが大変だった。


海斗は手が不自然にぷらんとなってたから、救急病院に行ったりして。


大変だった。



疲れた。



レトルトカレーライスを食べながら、葵の事を思う。


今頃、悠ちゃんが優しくフォローしてくれてるんだろうけど、その役回りが自分じゃないのに、恨めしく思う。


年の功と言う奴だよ。


しょうがない。


こんな時、経験の浅さでうまく対応できない。


だから。


早く大人になりたい。


葵を支えてあげれるくらいの強さと、社会的な立場。


だから、バイトを始めたのに。


俺がいなかったから。


二人っきりにしたから。


こんな事になったんだ。


悔やんでも、どうしようもない。


葵ちゃん。


いつから、お姉ちゃんと呼べなくなったんだろう。

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