テキストサイズ

キョウダイ

第9章 好きな人






はあはあ肩で息をして、家に入ったら柊斗がいた。




「おかえり」




珍しく、テンションが低い。




てゆうか、機嫌悪そうだ。




「柊ちゃん?お昼御飯食べた?」



玄関先にいた柊斗。



リビングに向かってスタスタ歩く。



「もう食べた」



素っ気なく答える。



柊斗に付いていく。




「ええっ?何を食べたの?」




「レトルトカレー」





リビングに入り、ごろんと寝転ぶ柊斗。




その顔を上から見下ろして、おでこにそっと手を乗せる。




「……っ!」




柔らかいふわふわの癖毛があたしの手に掛かる。



くすぐったい。



柊斗の体がびくんと震える。




「柊ちゃん?具合悪そう、お熱ある?」




「……ないよ」




言うわりに、ぎゅっと目を閉じてる。



長い睫が可愛いけど、具合が悪そうにしか見えない。




「カレーライスがいけなかったのかな?むかむかする?食べ過ぎたの?」




今度は柊斗の胃の辺りのお腹を撫でる。




「……!」




制服から私服に着替えてるみたいだけど。




何だか顔も赤い気がするし。




「葵ちゃん、もういいから、あっち行って?」




あたしはびっくりした。



柊ちゃんに追い出されるなんてっ。



昔からあたしになついてたし、いつも一緒だった。



その柊ちゃんがっ。




「やっぱり本当に調子悪い?リビングで横にならないで、部屋で横になった方がいいよ。動くのもしんどい?」



目をそらし、顔を背けられる。




「柊ちゃんどうしたの?どこが悪いか言って?そうだ海斗は?」



ケータイを開くと、海斗からそっけないラインの文章があった。



「図書館で勉強する。飯はいらない」





「海斗は図書館に寄るみたいだね?」




しゃべらない、柊斗に不安になる。





「柊ちゃん?」





あたしから頑なに目を合わせてくれない。




訳も分からずにオロオロする。




泣きたくなった。






「あたしの事、嫌いになっちゃった?キョウダイじゃないし……汚れた体になったから……?」












ストーリーメニュー

TOPTOPへ