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キョウダイ

第14章 陽だまりの優しさ






「明はあたしの事なんか好きじゃない、昔の事にこだわってるだけなんじゃない、生きてるのに、生まれかわったのにどうしてそんな風なの?
奏ちゃんが死んで、あたしが平気だとでも思うの?
毎晩あの事故の夢を見て、繰り返し死んで行く奏ちゃんの夢を見て、あたしが平気だとでも思うの!?」



気付いたら叫んでいた。



興奮して肩で大きく息をする。



ポロリと涙が零れる。



明の顔色がさっと変わる。



しまった、というような、いつものパターン。



膝の上の弁当箱を置いて、後ろからあたしを抱きしめる。



「ごめん……!言い過ぎた……!ごめん……!」




いつものパターンだ。



本当にいつものパターンなのに、割りきれない自分がいた。



無性に悔しかった。



どうしてあたしだけが、生き残ったの?



そんなのはあたしが聞きたい。



どうしてみんな、あたしを置いて死んでしまったの?



「明なんか、大嫌い……!」




繰り返し呟き、泣いてるあたしを、明はずっと抱きしめてくれていた。



あたしには分からない。




明の気持ちが。




何を考えているのか。




何がしたいのか。




あたしが好きなのか。




あたしが憎いのか。




だったら近寄らないで、放っておけばいいのに。




あたしが逃げたら追いかけてくる。




あたしが近付くと意地悪する。




何度も繰り返し喧嘩していた。




優しく謝るなら、最初から意地悪しなければいいのに……。



分からない、明の事が……。



しばらく、涙が止まらなかった。




そんなあたしを泣かした張本人が、優しく抱きしめてくれていた。



涙が止まるまで、ずっと……。




そんなあたし達に柊ちゃんが気づかない筈ないのに……。




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