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旅は続くよ

第7章 一緒に寝てるの?

Mside



大野の家は広い上に、面白い造りになっている

公園に面した道路から見て

右側が古書店、左側が母屋なんだけど

叔父さん、つまり、さと兄のお父さんが古書店を改装した時に

古書店側に部屋を幾つか増築したせいだ

古書店と母屋は、台所とリビングで繋がっていて

それぞれの棟の間には洗濯物が干せる程度の中庭がある

まあ、日当たりは良くないけど


要するに、何が言いたいかというと

大野の家に来てから、俺の部屋は古書店側で

まー兄の部屋は母屋の2階

ついでに言えば、ニノの部屋も母屋の2階

…あんまり面白い状況ではないし

何ていうか…

ハッキリ言えば『まー兄不足』なんだ


ゼミの研究で夜遅く帰ってきた時、

ふと家に入る前に見上げたら

まー兄の部屋の電気が点いていた

時計を見れば、もう日付が変わる頃

寝る前に少しでも声が聞きたくなって

荷物を持ったまま、母屋の階段を上がった


まー兄の部屋をノックしようとした、その時

聞こえてきたのは……ニノの笑い声


ノックをする手がドアの前で止まった

足が動かなかった

声も出なかった

なのに、耳だけが妙に敏感で

気づけば懸命に部屋の中の声を拾ってた


A「あー…、もうこんな時間」

N「あ、ホントだ…」

A「ここでセーブ出来たっけ?」

N「できる出来る。区切りもいいし止めよっか」


なんだ、ゲームしてたのか…

だったら入って行けばいいのに

体は固まったまま動かない

カチャカチャと何か片付ける音と一緒に、2人の声を聞き続けてた


A「クフフッ、でも今日は随分レベル上がったっぽくね?」

N「アンタ張り切り過ぎだよ」

A「潤、ビックリするかな~」

N「知らないダンジョンでビックリだと思う」

A「あ、ヤベッ。戻っとかなきゃね」

N「まあ、それはまた明日ね」


ニノの声がドアに近づいてきて

少し慌てた途端、まー兄の声がハッキリと聞こえた


A「今日もここで寝てけば?」


その声が妙に男らしく聞こえて

思わず息が止まった


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