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旅は続くよ

第15章 それでもキミの為に

いや…、

ホントはそんな素直じゃなかったかもしれない

今思えば美しい思い出になってるだけで

思春期のガキだった俺は、もっと捻くれていたのかもしれない

それでも、以前よりはずっと嫌悪感はなくて

日に日にそれは薄れていって…

大学での新しい環境、

ずっと変わらずいてくれる兄、

そういうものに囲まれて初めて

やっと俺は変わっていけたのかもしれない


S「だからさ、ニノだってそういうチャンスがあるんじゃないかって俺は思うよ」

仕事に夢中になって

それでもダメなら、また他の事を試せばいい

その場にただずっと立ち止まってるよりは、ずっといい

だってニノは生きてる

ニノのお母さんには悪いけど

死者の想いに囚われて生きるには、ニノはまだ若く輝いてる



S「な?…村尾さんに会ってみてよ」

何でもいい

ニノにとって良いキッカケになれば何でも

ニノに前を向いて欲しいんだよ


N「やだよ。そりゃ村尾さんは憧れの人だから会ってみたいけど…
そんな初対面の人に自分売り込める程、ヤル気があるわけじゃないもん」

S「いいよ。ニノはそんな心配せずに、ただ会って話してくれるだけでいいんだ
細かい根回しとか段取りは全部俺がやるから、気軽な気持ちで。な?」


N「……なんで?」

S「なんで、…って」

N「なんでそんな事までしてくれるの?
…俺、翔ちゃんの事断ったよね…?」

S「…それは…、関係ないよ」


そう、関係ない

そんな事、お前が気にしなくていい

勿論、ニノが好きだからやっているお節介だけど

フラれた事とは一切関係ないんだよ


N「でも、…翔ちゃんは何か勘違いしてる。
俺にそんな価値なんてないよ…」

S「そんな事言うなよ!」

思わずニノの腕を掴んだ


本当は抱きしめてしまいたかった

力の限り、伝えたかった

バカな事言うなよ

なんで知らないんだよ

どれだけお前が輝いてるか

どれだけお前が楽しそうに働いてるか…

大好きなヤツが、自分の輝きを知らずにいるのが悲しかった


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