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泣かぬ鼠が身を焦がす

第13章 正直の心より


「良かったねぇ、ノラ? 仕方なくまた、飼ってくれるって」
「…………っ」


その言葉に、心臓が波打ったみたいに感じた


仕方なく
仕方なく

杉田さんも……?


心の内からぶわっと広がるみたいに黒い感情が溢れて止まらない


「ノラ? どうした?」
「あははっ、あんたは知らないんだ。ノラのNGワード」
「?」


頭の中で響くのは、あの声
遠い昔に言われた言葉


『こいつが強請ったから、仕方なく』


身体が震えて止まらない

また、かよ


「ノラ? ノラ? どうした、大丈夫か?」
「……」


優しい声色で俺のこと心配してくれる杉田さんに、言いたいことは色々あるのに


助けてくれてありがとうも
好きになってくれてありがとうも
こんなことになってごめんなさいも


なのに
俺の身体は全く言うことを聞いてくれなくて、ただ何かに脅える小動物のように震えているだけ

藤本は俺の様子を見て満足したのか、高笑いしながら部屋を出て行ってしまった


畜生
あいつ、わかってたのかよ

俺の事情までは知らないよな?


「ノラ? 触ってもいいか? とにかくここを出て、部屋に戻ろう」


うん
帰りたい

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