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泣かぬ鼠が身を焦がす

第21章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー)

静目線


私は日本で知らない人はいないと言っても過言ではない杉田コーポレーションの社長であります杉田拓真様の秘書室第1秘書、伊藤静(イトウシズカ)と申します

これまで長い間社長にお仕えしてきた私ではございますが、あの時ほど驚いたことはございません


「おい、車を止めてくれ!」


突然そう叫ばれた社長が勢いよく車を出られて、1人の少年を拾った時のことです

孤児のように少し汚い身なりをした少年でしたが、そんなことには目もくれず倒れる彼に駆け寄る社長の広いお心に私は大変感動しておりました

ですが、最も驚いたのはその後の事です


「様子を見て来てくれ」と仰った社長の言いつけ通り拾った少年の様子を見に行った私はその時、天使を見たのだと思いました

少し長めの黒い髪に、白い肌
そのコントラストの美しさはまるで絵画


一瞬で、私の心は奪われてしまったのです


しかしノラと名乗ったらしいその少年に心を奪われたのは私だけではなく、社長も同じだったようでした

なので、私の思いは心の奥底に閉じ込めなければいけません


わかっていたのです
わかっていた、はずなのでした

それなのに、まさかあのようなことを私がしてしまうなんて

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