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泣かぬ鼠が身を焦がす

第21章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー)


「…………」
「やっぱり、ダメ?」


ダメと言うか


「……俺のこと、嫌いになった?」


嫌い、には……
なってません、ね


私が首を横に振ると、「良かった」と安堵の表情を浮かべる三村様

精悍な見た目の男性がしゅんと気を落としたり、上げたりというのはかなり異質な光景です


しかしこの表情の変わり具合が、軽薄なイメージを抱いてしまいます


私が窓の外に広がる夜景に視線を動かすと、三村様から小さな呟きが聞こえました


「すみません、もう1度お願いします」
「あぁ、いや……何でもない」
「?」


何でもない、と言われてしまっては私に追求する術はありません

何と言ったらいいのかわからなくなってしまい口を噤むと、三村様が半分立ち上がりながら


「伊藤さん、ごめん。俺がこんなところで話し始めたんですけど、場所変えない?」


と仰られました

チラ、と三村様が店内を見渡したのに吊られて私もそちらに目を向けると、確かにこのような話をするには不適切な場所です


「わかりました」
「じゃあ、ちょっと待って」


三村様が片手を軽く挙げ、カードをウェイターさんに渡して会計をお願いしました

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