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泣かぬ鼠が身を焦がす

第27章 苦あれば


俺の言葉にお手伝いさんは頷いた


「構いません」
「そんな……」


これ、って……
俺逃げていいのか……?


「……」
「……っ」


黙った俺が悩んでいるのが伝わってしまったらしくて、お手伝いさんは立ち上がって俺の手を強く引いた


「早く、行ってください! こんなところにいちゃいけません!」
「わ、ちょ……引っ張らないで……!」


俺はぐいぐいと手を引かれて窓辺に連れて行かれ、お手伝いさんはロープを用意し始めた


ってそれ、俺が前あの人に縛られてた縄……


部屋の1番重い家具にロープをとりつけたお手伝いさんは反対の端を俺に差し出した


「私のことは心配しなくていいです。今すぐ、行ってください」
「そんなわけには……」
「……」
「……」


ここは、優しさに甘えるべき
だよね


「……じゃあ俺、行きます……」
「はい」


笑顔で頷くお手伝いさん


「ここには絶対に戻って来ないで下さいね」


優しさで溢れたその笑顔に、俺は首を横に振った


「ううん。絶対に戻ってくるよ」
「え……」
「俺が絶対に、ここじゃない別のところでの仕事先を見つけてくるから」
「!」


こんなにいい人なんだから
ちゃんとしたところで働いて欲しい

だから拓真さんに頼んでみる
もしダメでも、絶対にどうにかしてみせる

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