
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
2回のお辞儀
2回手を叩く
そして最後にもう1度お辞儀
作法通りにお参りをしてみたけど、今の俺に見守って欲しいことなんてなくて
とりあえず教えて貰った通り住所と名前を言った後
もっと拓真さんの役に立てるように頑張るので、見守っていて下さい
とお願いした
顔を上げると拓真さんが俺の方を見ている
「? 何?」
「やけに長かったな」
だって何お願いするか決まってなかったんだもん
「どんな願い事をしたんだ?」
「え、それって人に言っていいもんなの? ダメじゃない?」
「普通は言うと叶わなくなるとか言われるな」
「ダメなんじゃん!」
神様なんて正直そこまで信じてないけど、万が一にも叶わなくなったら困るから!!
俺が怒ると拓真さんが笑う
くそーからかいやがって
「よし、じゃあ行くか」
散々笑われた後、拓真さんが区切るようにそう言って歩き出す
「どこに行くの?」
「今回の旅行の目的地」
「ふぅん?」
目的地
ってことは、その花束を渡す相手のところ?
『貴方を愛しています』
って伝えたい相手のところ?
「……」
「純? どうかしたか?」
「……ううん。早く行こう」
