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(旧)短編☆中編小説集

第11章 運命の愛

「それじゃあ始めるか」



奴の唇が首筋に触れた瞬間に全身に悪寒が走り抜け。

服のボタンは外されていきズボンのベルトにも手が掛かり。

“たっ、助けっ…”

心の中で思わず叫んだそのとき。

キキィーッ、ガクン―

電車が、急ブレーキを掛け停止したかと思ったら。

グイッ!

誰かが俺の腕を掴み、人壁から引っ張り出してくれてよ。

そいつはそのままグイグイ人垣を抜けて行き。



「大変ご迷惑をお掛けしました○○駅に到着です」



プシューッ!

ドアが開いたとたん外へと連れ出される。

ガタンゴトン―

その後ろをさっきまで自分らが乗っていた電車が発車して行くのを気配で感じながら。

俺は危うく難を逃れたことを悟ったんだ。



北「ぁ…ありがと‥」



が、向けている背中にそう言うと。

振り返った顔を見て、更に驚いちまってよ。



「いや電車が急ブレーキを掛けなかったら、助け出せたかどうか」



ちゅ、中学生か?こいつ。



「でも良かった俺が言うのもなんだけど混まない時間帯にした方がいいんじゃない」



そのうえ今までも、痴漢に襲われている俺を見て何とかならないかと。

心配しながら見ていたって言うからビックリしたのなんの。



北「あぁ、明日からはそうする」



が、あれから何年も経った今でも。

俺はこのときのことを忘れることが出来ないでいる。

ガタンゴトン―
     ガタンゴトン―

特にこうして一緒に電車に乗っていると思い出すんだ



藤「混んでるなぁ」



再会したとき覚えているのかいないんだか分からなかったけど。



藤「もっと俺の傍に寄れ、じゃなきゃつぶれちまうぞ北山」

北「そこまで、小さかねぇわ」

藤「あははっ」



藤ヶ谷は、混んでいる電車に乗ると。

必ずといっていいほど俺の身体を護るかのように包み込んでくれる。

その逞しい腕の下で―





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