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暗闇の中の一等星

第4章 暗闇の中の一等星―真治の過去―

 真治(マサハル)は暗い嵐の夜に一人、家で考えていた。外は凄まじい風が吹き、激しい稲光。まるで真治の心を投影するかのようだ。

 真治は先ほど、紗希(サキ)と話をしていて、些細なことから喧嘩になってしまった。

「家に帰って紗希が料理して待っててくれたら嬉しいな」
 真治の言葉に紗希は黙り込んでしまう。

「何で黙り込む?」

「……できない」

「えっ?」

 紗希の一言に真治は困惑する。

「だって何もできないもん」

「何でさ? 俺も協力する。何も紗希だけに任せるとは言ってない」

「でも、教えてもらってない。中二にお母さんを亡くして不安なの。できないよ」

 紗希の声は次第に沈んでいく。

「紗希はお母さんがいないことを言い訳に逃げている。俺だって、小さい頃から
親がいないけど、自己流で料理も掃除も覚えてきた」

「みんなが真治みたいに強いわけじゃない」

「俺だって強いわけじゃないよ。人のせいにしないで頑張ろうってこと」

「真治は私のこと分かってない」

 成長しない。一度、考え直した方がいい。紗希はいよいよ泣き出してしまう。

「そうかもな。でも、今のままじゃ紗希はそんなんじゃ、お母さんが可哀想だよ」

「もういい!」

 そう言い放つと紗希は電話を一方的に切った。

 いつもならすぐかけ直す真治だが、この時ばかりは紗希のことを放っておいた。それは真治なりの優しさだ。

 だが、それでも真治は後悔し、また思い出していた。

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